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悪魔のように非情な男が純愛に目覚めるまで ~前編~

トビタの中学時代からの友達に、恐ろしく冷酷で非情な男がいる。
その男は、家に帰って死にそうなゴキブリを発見すると、わざわざ水に浮かべて「ヒヒヒッ、こいつムダな抵抗してやがる」と不気味な笑みを浮かべながら楽しんでいるような非情な男だ。

その男の名は、いったん「フルえもん」という設定にさせていただきたい。
これは、その男がまるでドラえもんのように、押し入れに布団を敷いて就寝するスタイルを貫いているから。知っている限りで、もう6年近く押し入れの中で寝ていると思う。

フルえもんは非情だから、当然、恋愛なんてものに興味がない。
中学の時、成り行きで付き合った子と一緒に帰っていたときも、毎日のように「話すことがねえんだよ、俺に何かネタをくれないか。どこかにおもしろい話は転がっていないのか」と苦悶していた。

緊張して話せないなら分かるけど、フルえもんの場合は相手に興味がなく、楽しませる気がないのがたぶん理由。結局、3ヵ月も経たないうちに、その子とは別れてしまった。

とはいえ、そんなのは中学時代の話。まだこっそり家でコンドームの試着をして喜んでいる年ごろのことだ。
普通は年を重ねるごとに、常人の温かさを身につけていく。

しかし、フルえもんは変わらなかった。いや、もっと悪化していったかもしれない。

トビタが大学4年のとき、就活で地方から毎日のように東京へ出てきたのだが、そのときフルえもんのアパートにいつも泊めさせてもらった。

トビタは毎日慣れない東京で、しかも就活のプレッシャーに押し潰され、「自分を虫に例えると何ですか? 理由も教えてください」みたいな、訳の分からない質問攻めに合ってすっかり参っていたのだけど、しかし夜寝る前に、フルえもんがぶつけてくる重たい質問にも大いに悩んでいた。なかでも特にすごかった質問が、1つある。

それはある夜のこと。
明日の面接のことを考えながら眠ろうとすると、当時すでにドラえもんスタイルで寝ていたフルえもんが、押し入れの戸を半開きにして静かにこう言った。

「俺、人を好きになるっていう意味が分からないわ」

春の夜、部屋に男2人。そこでこの質問。これだけでも十分ひどいのに、さらに問いかけてきた男は押し入れで寝ている。コントみたいな状況と、それとは正反対のピュアな質問。補足すると、そのときのフルえもんはドレッドで完全に裏社会の住人。

その男が「人を好きになるっていう意味が分からないわ」とつぶやいてきた。

トビタはここで渾身の回答。
「エッチしたいと思ったら、その子のことが好きなんじゃないの?」と言ったのだが、フルえもんは当然納得しない。結局トビタは、その答えを見つけることができなかった。
とにかくフルえもんはかなりの重症だ。それだけが心に残った。

しかし、人は変わる。なんとあのフルえもんが今では彼女と付き合っているのだ。
しかも同棲していて、さらに何ヶ月も一緒に旅行してたのだ。これじゃあ一般人みたいだ。

そしてある朝、トビタはさらに驚いた。寝ぼけながら覗いたmixiのマイページにこう書いてあったからだ。

「友達のフルえもんさんが『彼女が好きすぎてたまらない』コミュニティに入会しました!」。

あのフルえもんが? そんなことあるわけないのに…でも、これは夢ではなかった。


次回へ続く。
プロフィール

トビタ シンイチ

Author:トビタ シンイチ
24歳のときに訪れた飛田新地に深く感動。以来、あの地を心の故郷と仰ぎ、風俗にハマる。最近は素人にも興味を抱き、合コンやナンパ三昧の日々を送る変態ライター。
「飛田新地は文化遺産だ!」委員会会長(会員1名、後援会員6名)

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