高校卒業までの18年間、実家で暮らしていたときは、親や姉、あるいは飼っている犬との共同生活でありながらも、彼らに見つからないようにうまくオナニーしていた。
正直、あのときは実家でオナニーすることが難しいだなんて、まったく思わなかった。
だけど、一人暮らしを始めてからは、これがどうもうまくできない。
社会人になって初めて帰省したある日。居間にいたら、真木よう子がテレビで巨乳を見せつけるものだから、ご飯前にもかかわらずニ階に上がって、自分の部屋で一発試みた。
エッチなビデオも本も何もないけど、そんなのは関係ない。もうすぐご飯だなんてことも知ったこっちゃない。
わずかな時間で一発抜く。これがトビタの真骨頂だ。
その自信にたがわず、さあもうすぐフィニッシュだ…と、ティッシュを持つ左手に力を入れた瞬間、階段の下から父親の声が聞こえてきた。
「シンイチー、ご飯出来たぞー」
マズイ。この瞬間はマズイ。なんて、アタフタしているうちに相棒は着地点に入った。
そしてすでに、もう噴射口からは第一陣が飛び出そうとしている。
とりあえずしっかり出してから返事をすればいい。おそらくほとんどの人がそう思うだろう。
でも、もしオナニーの真っ最中、しかも一番無防備なフィニッシュの瞬間に下から父親に呼ばれたら、きっと誰もがパニックになって、こんな恐れを抱くのではないか。
「早く返事をしないと、親父が2階に上がってきてしまう!」
事実、トビタは本気でそう考えた。そして、発射と同時に声を絞り出して返事をした。
「あっ、ああ…」
いけない。これじゃあ、まるであえぎ声。
父親もびっくりしただろう。息子はいったい何をやっているんだ、と。おかげで飯もマズくなる。
でも仕方ない。タイミングが悪かったんだ。
その後、父親とは若干気まずい空気になったが、しかし、所詮は返事が少し不自然だっただけ。
別に現場を見られたわけではない。うろたえちゃダメだ。
なんて思っていたら、今度は本当に現場を目撃されてしまった。しかも姉に。
あれは社会人2年目の夏休みだろうか。
実家にはトビタと姉しかいない状況。姉は居間にいたから、またも自分の部屋にいたトビタはリラックスした状態でオナニー体勢に入る。
実家には良いオカズがないから想像が命。極上のエロシーンを思い浮かべようとした。
誰も来ないだろうという安心感、そして解放感。それらが極限の集中を生み、周囲の雑音を完璧に遮断したのだろう。ふと気付いたら部屋のドアが開き、姉が入ってきた。
そのときトビタ、下半身裸、ベッドの上にあぐらをかいて左手にティッシュを持った状態。
「シンイチ、コーヒー作ったけど…わっ、びっくりした…」
姉がこんな行動を取るのは初めて。トビタは布団をたぐりよせ、必死に股間を隠した。
姉も瞬時に色々なことを考えたのだろう。
弟の哀れな姿を目撃し一瞬はうろたえるも、その後は股間を布団で隠す弟に「コーヒー作ったけど飲む?」と見事に平然を装った。
あのとき、何事もなかったように取り繕う姉の姿が、社会人2年目のトビタにはむしろ苦痛だった。
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